ミシュラン三ツ星ってどういう意味?

コラム

グルメの国フランスにはレストランの格付けをしているガイドブックが多数あるが、その中でも一番有名なのがタイヤの会社ミシュランの赤いガイドブックだろう。

創刊は1900年8月、世界初ともいえるこのガイドブックが出されたのには、同年にパリで開催されたパリ万博が大きく関係している。ちなみにこの年はパリで初めての地下鉄1号線が開通した年でもあった。ベルエポックの絶頂期でもあり、お金持ちの旅行ブームに火が付いた時代。パリで開かれた6回の万博のうち5度目に当たる1900年の万博は、新しい世紀の幕開けということもあり、パリ万博史上最大規模となった。なんと5100万人近い入場者があったというのだから驚く。

その前年にはグルノーブルに初の観光協会ができ、瞬く間にフランス全土に広がっていった。自動車に空気入りタイヤが初めて装着されたのは1895年。鉄道網ができ、自動車が走り始め、今後ますます観光旅行とリゾートの時代が来ることが予期された。そのブームに先んじて発行されたのがミシュランのガイドブックだったのだ。

ガイドブックは当初、自動車運転者用で35000部を無料で配布したそうだ。内容は市街の地図やガソリンスタンドやホテルの情報、自動車の整備方法などが書かれてあった。配布の目的は、あくまでもこのガイドにより自動車旅行が活発化し、タイヤの売れ行きを上げることであった。(ちなみに現在もガイドブック事業の売り上げは全体の利益のたった1%ということで、ガイドはブランド名を売り込み、タイヤ事業を発展させるためのものだそう)
1920年からガイドは販売されることになり、1930年からはレストランの格付けが始まった。ガイドブックは2種類あり、グリーンガイドが観光、レッドガイドがレストランやホテルの案内になっている。

 

 

レストランの格付けは、1~3つの星の数が有名だが、その他スプーンとフォークの数で表されているところ、ビブグルマンというマスコットのビバンダムのマークで表されているところがある。星が付くというのは一番価値が高く、スプーンとフォークの数の方はそれよりは劣るが良店で、1つから5つまであり、数が多い方が優秀だ。ビブグルマンはコストパフォーマンスのよい店に与えられる。
星の意味するところは、一つが「その分野で特に美味しい料理」二つが「きわめて美味で遠回りしてでも訪れる価値がある」三つになると「それを味わうために旅行をする価値がある卓越した料理」という意味である。2024年のガイドではフランス全土で一つ星は531軒、二つ星は75軒、三つ星は30軒だ。

 

 

星の数をめぐってはこれまで様々な事件があった。星を取り消されたことに腹を立て、自ら掲載を取りやめてもらったシェフ、あるいはそんなガイドの評価に左右されたくないと星がもらえているのに掲載を拒否するシェフ、星の数が減らされたことを気に病んで自殺してしまったシェフなど。たかがガイドブックにそんな影響力があるのかとも思うが、それを基準にレストランを選ぶ人たちがいる限り、悲喜こもごものドラマは続いていく。
そもそも論だが味覚はみな違って当たり前だし、万人が同じ味を良しとするかは疑問だ。またレストランの善し悪しをカテゴライズし、シェフの運命を変えるような大きな決定を下す調査員も所詮はただの人ではないのか?(この調査員は2人組でお忍びでレストランに出向き、平均的な料理を注文して評価するそう。わざとフォークを落とすなんていう話もある)

 

 

私的には三つ星を取った途端、世の中の人たちがこぞってそのレストラン行きたがるという現象や、星付きの店で食事したことを自慢げに語る風潮というのも鼻持ちならない気がする。三つ星レストランは何がどれだけ優れているのか?という選定基準もクリアにされておらずよく分からない。
実際、星付きのレストランをお客様のために予約しようとしてもなかなか席が取れなかったり、予約の段階でびっくりするようなギャランティーを取られたり、どこまで本心か分からないような慇懃な応対をされたりするとその敷居の高さと気取ったサービスにうんざりさせられることもある。なんというか、食事をする客であるこちらも同様に品定めされているような気になって落ち着かないのだ。

長い年月ずっと三つ星を守り続けている店はもちろん敬意に値する。しかしようやく一つ星を取ったばかりのレストランの方が、勢い、創意工夫、値段の妥当性などで魅力的なところが多かったり!(ちなみに一つ星を取ると、店の売り上げが30パーセント増えるのだとか)

この山ほどあるフランスのレストランの中で、自分なりの価値判断で居心地が良く美味しく、納得のいく対価が払える店を見つけること、それが「私の星付きレストラン」なんじゃないかという気がする。ホント、それがなかなか難しいんだな~!